修理の豆知識 フルートのタンポ(パッド)」

どの木管楽器にも共通していえることですが、楽器の「音色」を維持するために、タンポの安定性、耐久性が非常に重要な要素となります。
特にフルートに関しては、湿度によるタンポの変化が音色に影響しやすく、現在でも各メーカーが日々タンポに最適な素材を見つけるため、日々研究がなされています。
ここでは、現在までに研究されているタンポの特徴をお話ししたいと思います。

タンポによるタッチの違いが、皆さんにも体感できます!

これからご紹介するフルートのタンポは、それぞれコンセプトが異なります。この「タンポ」が音色を左右し、各メーカーの(音色の)ブランドイメージを作り出しているといっても過言ではありません。

今回は、代表的な3つのタンポを紹介致します!


(写真はムラマツ用)

(1)フィッシュスキンタンポ

 現在最も一般的に使用されるタンポです。
圧縮したフェルトの上に、ブラダー(豚の腸)を巻いています。
特徴は、素材が薄いため、トーンホールへの密着が非常良いという事。
そしてフェルトの柔らかさが伝わりやすいので、音も柔らかく繊細で、指への振動も自然です。また、価格がリーズナブルなのも魅力の一つです。
  ただ、素材が薄いため、耐久性はあまり良くありません。
湿度や水分の影響を受けやすく、時間が経つにつれて表面にシワが寄り、このシワが雑音の原因
になって音に出てきます。
ご自身の楽器のタンポを見ていただいて、トーンホールの跡に沿って破れていたり、硬くなっていたり
ケバケバになっているようであれば要交換です!

   

(写真はパウエル用)

(2)ストロヴィンガータンポ

 アメリカのストロビンガー氏が開発したタンポで、既に特許を取得している画期的なタンポです。
フェルトパッドに比べて寿命が長く、経年劣化や湿度による変化が少ないため、丁寧に扱っていれば、タンポそのものの調整はほぼ必要ありません。
新素材の採用によって、トーンホールにタンポが当たる際に固めの音が出ます。
ストロビンガータンポの構造は5層と複雑に成型されており、特に時間や湿度によって変化の激しいフェルトの厚さは最小限に抑えられ、高精度の樹脂枠内にフェルトを収納して、パッドの自然変化をほぼ解消しています。

   

(3)ムラマツオリジナルタンポ

 その素材、仕様などは現在は公開していませんが、一時期ストロビンガーを使用していたムラマツフルートが、その「硬さ」を嫌い、独自に開発したタンポです。
  構造的には特殊なシリコンの階層に加え、内部を中空にする事により、ほど良い柔らかさの音色とタッチを実現。内部はこの後に紹介するシリコンタンポかと思われます。
 フィッシュスキンのような柔らかさ+ストロビンガーのように調整はほとんどいらず、耐久性も申し分ない、まさに画期的なタンポといえます。

   

ごめんなさい!
画像はありませんm(。._.)m

(4)シリコンパッド

トーンホールがあたる部分の周りが中空になっている、シリコンを使用したタンポ。
中空になっていることによりたわみを持たせている。
フルートのほか、ピッコロにも使われるタンポです。
調整の頻度も少なく、耐久性も良いたんぽですが、残念ながら日本ではあまり使われておらず、主にヨーロッパでよく使用されています。

   
内側断面の違いに注目!

←左からストロビンガータンポ、 フィッシュスキンタンポ、 ムラマツタンポ。
内側の断面に注目! ストロビンガーが、内部に樹脂を入れているため、白い樹脂が顔を出す。
フィッシュスキンの断面はフェルトがむき出しになっている。 ムラマツは断面に金属が張ってあり、変形しにくい構造になっている。 変形しにくい分、初期の調整は難しい。

◆画像をクリックすると拡大写真がご覧になれます。

これでフルートのタンポにはどのような種類があるのかは分かりましたか?
今まで様々なタンポが研究されてきましたが、これだけ「未完成」なフィッシュスキンが多用されている理由の一つは、やはり「音色の柔らかさ」ではないのでしょうか?
しかしながら、ムラマツのタンポはまだ開発されたばかりで、これからどのような評価がされるのか期待されるタンポです。

また、より調整が必要ないタンポは、断面や内部に金属や樹脂などを加え、形状が変化するのを抑えた構造になっています。
フィッシュスキンは古典的で、断面には何も処理は施されていません。
その分形状が変化しやすく、調整を頻繁におこなわなければいけなくなります。

「別の材質のタンポに交換したい」という方もいらっしゃるはず・・・。
しかし、メーカーによってタンポのサイズが異なり、適合するか確認する必要があります。
中には、同じ場所でも1mm以上大きさが違うものあるので、要注意です。

基本は純正のタンポを使用してくださいね。各メーカーが研究を重ねて使用しているわけなので、
純正が一番、そのメーカーの「個性」を引き出してくれると思いますよ。

 

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